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知財に関わる女性同士の交流の場です。

仕事体験談 Vol.2 ~大学院博士課程の農業知財研究者 《私にとっての弁理士資格とは》~ — 2017年3月11日

仕事体験談 Vol.2 ~大学院博士課程の農業知財研究者 《私にとっての弁理士資格とは》~

仕事体験談の第2弾です!

今回は、大学院博士課程で、農業経済学の知識と弁理士試験で学んだ法学の知識を活かしている農業知財の研究者による体験談をシェアします。
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私にとっての弁理士資格とは             O.C

私は、現在K大学大学院博士課程であり、社会人でかつ弁理士業務に従事しておられる皆様とは全く違った環境にいます。
また、弁理士の資格を有していますが、当然登録はしていません(お金がかかるので…)。しかし、登録していないからといって資格や試験勉強、さらには講習で得た知識が役立っていないわけではありません!!

〇弁理士試験を受けたきっかけ
大学生になった私は、就職活動でなにかアドバンテージとなる資格を取りたいと考えていました。そんな中、大学1年目の夏に知財関係の集中講義を聴講し、弁理士の仕事に興味を持ちました。また母の友人(複数人)が弁理士として働いていたために弁理士という仕事を身近に感じることができ、その年の秋から早速試験勉強を開始しました。大学1~3回生は必修科目が少なく、勉強時間が十分確保できたこともあり、2年後(大学3回生時)に合格することができました。

〇試験合格後~大学卒業まで
大学では農学部に所属しており、農業経済学を専攻していました。当時、農林水産省でも知財戦略が策定されたこともあり、農業分野の知的財産(以下、農業知財とする)をいかに保護・活用し、産業競争力の向上や地域活性化を目指していくかについての議論が少しずつなされてきていました。
しかし、合格後に受講した弁理士研修では農業知財を取り扱う機会はなく、また農業分野を専門とする弁理士の先生が非常に少ないことに衝撃を受けました。その体験から農業知財は農業現場においてどのように保護・活用されているのか、あるいはできているのかという問題意識を持ち、卒業論文では、都道府県が開発した新品種(果樹)がどのように保護・活用されているかについて研究を行いました。品種開発では進歩性の要件を満たさないため、種苗法での保護が一般的であり、弁理士試験での勉強が役立たないのではと思ったのですが、種苗法の体系は特許法と類似する箇所が多く、特許法を勉強していたおかげで、種苗法の条文をすんなりと理解することができました。
また、弁理士資格が私の人生選択に大きな影響を与えた出来事もありました。大学3年から4年次にかけては、就職するか、あるいは進学するかを決める大事な時期です。私は進学希望でいましたが、どの大学院に進学するか悩んでいました。そんな時、現在所属している大学院の教授が集中講義にいらっしゃいました。講義後、研究の話をする時間があり、農業知財に興味を持っていて、弁理士資格を研究に活かしていきたいと話したところ、農業経済学分野では知的財産権法に詳しい研究者がいないこと、ちょうど当研究室で弁理士との共同研究が開始されたことがあり、研究室を受験するよう勧めてくださいました。弁理士資格を有していなければほかの大学院で全く異なる研究を、さらには博士課程に進学することなく就職していたかもしれません。

〇大学院入学後~修士課程卒業まで
大学院修士課程では、遺伝子組換え種子に付随する特許権が農業者の種子使用に与える影響について研究を行いました。考えられないことかもしれませんが、種子は長年農業生産に必要な投入財であり、かつ農業共同体の共有財として扱われてきたので、とりわけ独占排他権である特許権が付随する遺伝子組み換え種子に対しては、農業者の自由な種子使用を制限し、自家採種や種子保存による利益を奪っていると多くのNGO団体が主張しています。彼らの主張は、実態調査に基づかないものや特許制度の内容に言及していないものが多く、私たちにさまざま誤解を与えているとの問題意識から米国を対象として、種子会社、種子販売業者、当該種子を使用している農業者へのインタビューの実施、関連する特許訴訟の分析を行いました。この研究をすすめる上でも、弁理士試験や研修で得た知識、また資格を有しているからこそ得られる情報ネットワークが非常に役立ちました。また研究費を獲得するうえで、農業経済学だけでなく、法学(知的財産法)の専門知識を有していることは大きなアドバンテージとなりました。農業経済学の知識と法学の知識を組み合わせた、いわば融合研究を行うことで、結果として、両分野ともに新規性が高く、かつ一定の評価が得られる論文を投稿することにつながりました。
加えて、研究以外にも知財に関する知識を生かす場がありました。具体的には、中小企業診断士の先生と共同での都道府県農業戦略の草案作成や6次産業化を目指す農業経営に対し知財に関する勉強会の開催等です。

〇今後
大学院博士課程では、ビジネスモデルを支えるものとして知財マネジメントの重要性が高まりつつある種苗ビジネスを対象とし、効率的かつ効果的な知財マネジメントのフレームワーク提唱につなげることができる研究を予定しています。研究以外では、中小企業診断士やプランナーの方と共同(お手伝い?)で、6次産業化を目指す農業者の方々をサポートする仕事を行う予定でいます(私は知財権に関する知識普及を担当する予定で、あくまで補助として入るので弁理士法には抵触しません)。
弁理士資格は弁理士登録し、弁理士業務を行ってこそ価値があるものだと取得当初は思っていました。しかし、今振り返ると登録していない弁理士資格でも、それがあるがゆえに研究ネットワークが形成され、所属分野でだれもやっていない研究ができていること、将来の仕事の幅を広げるツールとして活躍していることを実感しています。さらに資格がなければIPwomanに所属し、皆様と知り合う機会もなかったので、本当に取得してよかったです!!

仕事体験談 Vol.1 ~特許事務所勤務の特許技術者《まだまだ修行中》として~ — 2016年3月27日

仕事体験談 Vol.1 ~特許事務所勤務の特許技術者《まだまだ修行中》として~

今回は、特許事務所で、特許出願から権利化までを担当する化学系の特許技術者による体験談をシェアします。
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《知財へのきっかけ》
私は、高校時代に「弁理士」という資格の存在を家族から聞いたことがきっかけで知財業界を目指しました。
うろ覚えですが、当時「弁理士になろう」という風なタイトルだった本を読み、何だか自分に合っていそう!と思いました。文系と理系の中間に位置するような自分の特性が適合すると思うとともに、女性も男性と同様に活躍できる職種であることに惹かれました。

実際には、弁理士を目指したときから10年近く後にこの業界に入ったのですが、やっぱり「文系と理系の中間」的な私にはピッタリの仕事内容と感じました。技術内容の理解に「理系」的なセンス、書類作成について「文系」的なセンスが求められる仕事と思っています。

《仕事内容》
特許事務所で、特許出願から権利化までを担当していました。経験年数は、休職中の期間を除くと8年弱ほどです。
具体的には、出願書類の作成、中間対応等がメインの仕事でした。日本企業の出願(国内出願、外国への出願)がメインでしたが、外国企業の出願(外国から日本への出願)もたまに扱いました。
小規模事務所で、経営層と直接コミュニケーションが取れる環境だったため、仕事の進めやすい環境でした。

勤務し始めた頃に感じたのは、「職場がすごく静か」で、「ひたすらパソコンに向かっていて動く機会が少ない」ことです。この点、おしゃべりが好きな方や、運動が好きな方には、辛い環境かもしれません・・・。私は幸い、1人の時間も楽しめるタイプで、文化系でしたので、そのギャップには比較的早く馴染んだと思います。
他方、チームプレーが少なく、個人プレーで進む仕事がほとんどですので、比較的スケジュール管理がしやすく、自分の時間を確保しやすいといえます。

この仕事は、法律知識、技術の理解、書類作成力、論理力、文章力と、求められる能力が数多いと思います。
業界内には優秀な方が多いのですが、それに対し凡人の私は、求められる仕事の質と速さに苦戦する日々です。この点は、運よく職場環境に恵まれたため、何とか許してもらい、乗り切れたのかな・・・という気がします。もしノルマが重視される事務所だったとすると、非常に厳しかったように思います。

事務所の特許技術者に求められる大事な作業として、「考えること」と「判断すること」があるな、と思います。
特に、「考えること」は時にとても難しく、波のある作業だなと実感しています。なかなか打開策が思い浮かばず、うーーん、うーーんとうなっている間はとてもしんどく、時にふとアイディアが出て、意見書を書き進めていると、何だかハイになっている瞬間があったり。未熟な私には、苦しく悩ましい時間が多いです。
他方、悩んだ結果、提出した意見書により特許査定が出るなど、たまに嬉しい結果が出ることがあるので何とかトータルでモチベーションが保てるのかな、と思っています。

《弁理士》
上記の通り、私にとって「弁理士」は憧れの資格でした。弁理士試験の受験時代は、新婚生活を捨て、友人の誘いを泣く泣く断り、一心不乱の日々でした。すなわち、弁理士になることは、私にとってのゴールと言えました。

ところが、実際に弁理士になってみると、「弁理士になった後に学ぶべきこと」の多さに愕然としました。この仕事において弁理士は、ゴールではなくスタートだったという!(気がつくのが遅い・・・。)
いつまでもいつまでも勉強が続く、という意味で、辛い、辞めたい・・・と思うことも多いのですが、勉強を通じて出会える仲間は素晴らしく、そこはいいなー、と思いながら苦しみ続けている日々です。(まだまだ、胸を張って「弁理士です」とは言い切れない私です。)

《知財職と女性》
ここで、IP Womanは女性の集まる場ですので、「女性」の目線から特許事務所の仕事を考えてみたいと思います。
※ひと口に女性といっても、様々なタイプの女性がおられますが、ここでは「一般的に」女性が得意なこと、と思われる内容を目線に考えてみます。女性が得意なこと、については、以前に私が読んだ下記の本(男女の脳の違いに関する)等の記憶から思い出しながら書いております。
・「キレる女懲りない男」(黒川伊保子著、ちくま新書)
・「話を聞かない男、地図が読めない女」(アランピーズら著、主婦の友社)

女性は一般に「複数のタスクを並行処理すること」が得意な方が多いと思われます。(逆に男性は、目標に向けてガーっと突き進むことが得意。)
特許事務所の仕事は、「期限」のある比較的細かいタスクを、バランス良く回していく仕事が比較的多いと思います。また、技術内容、法律知識、期限管理・・・と、あれこれ細か~いことを考慮しながら書類を作成するバランス感覚も求められる気がします。その点、あっちこっちに気を配りながら作業することに慣れている女性の脳は、そんな仕事に向いているな、という印象です。

また、上記に関連して、女性が一般的に得意とする「細やかさ」も、活かせることが多いように思います。例えば、提出書類のチェックでは、細かい実施例や書誌事項の確認により、事前にミスを防げることがあります。この点については、特許事務のベテラン女性の目利きは「本当にすごい!」と感じることが多かったです。期限管理の重要な事務所業務において、ベテラン事務さんの存在は絶大と思います。

加えて、発明者や、企業の担当者との「コミュニケーション」においても、女性が一般に得意とする気づかい、思いやり、は有効に働くシーンが多いと思います。また、明細書や意見書等の作成において、上司(指示者、書類をチェック者)の相性を高めていくことも大切と思いますので、コミュニケーションの大事さを感じます。(個人的には、コミュニケーションについては、まだまだ発展途上ですが・・・。)

というわけで、特許事務所の仕事は、一般的に女性が得意としそうなことを活かすチャンスが多いかな、と思っています。

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以上、思いつつままに徒然と書かせていただきました。
多少なりとも皆様のご参照になれば嬉しいです。

新企画「仕事体験談のシェア」 —

新企画「仕事体験談のシェア」

IP Womanでは、今後、新企画をスタート予定です!!
本会参加者の仕事体験談をシェアし、情報交換、仲間づくり、ロールモデル探し等の材料にできればと思います。
体験談の内容により、ホームページ上でのシェア、又は、参加者内でシェアを使い分けて共有していく予定です。

この会には、複数の地域から色々な職種の女性が集まっていらっしゃることを活かせれば嬉しいです。
今後、複数の角度の目線から、皆様の参考になるような情報をシェアしていきたいと思います。

ゆっくりペースの企画になると思いますが、皆様見守りくださいますようお願いいたします。